こんにちは、Fe(エフイー)です。
今回はVRに関する面白い研究をご紹介します。
それは、2020年9月1日に『Scientific Reports』に掲載された論文による、
VR(仮想現実)でのTS体験(性転換)がそのプレイヤー本人の心の性別を容易に動揺させ、異性化の方向に働きかける。
というものです。
「え?どういうこと?」という声が聞こえてきそうです。
つまり、ネットでよくみられるネカマ(プレイヤー自身がゲーム内で現実と異なる性別でプレイすること)をVRで行うと、そのプレイヤー自身が異性だと心で認識してしまうというものです。
これって結構すごいことですよね。
他の人間の目線、他の次元の生き物の目線でプレイできるVRゲームにおいて、自分の性別と異なるスキンの性別としてゲームをプレイするのはそれほど珍しいことではありません。
しかし、現実の性別とは異なる性別でVR内で過ごしていると、脳は自分自身があたかもVR内で選択した性別であるかのように認識してしまうというのです。
人間の脳は複雑に見えて実は単純な活動であることを、脳研究者の池谷裕二さんは著書の【単純な脳、複雑な「私」】などで語られています。
実際にこの本を読んで、人間の脳がいかに単純なプロセスで働いているのかがわかります。ぜひ機会があれば一読してみてください。
VRでの性別変化にすら影響される人間の脳。
しかしそもそも、私たちは何を持って自分は「男」、「女」であると判断してきていたのでしょうか。
今回は実際の論文(9月1日に『Scientific Reports』に掲載された論文)では、最新のVR技術を使うことにより、男性に女性の体を、女性に男性の体を与え、さらに現実で体を触られる感覚をVRの映像と同期させるというリアリティー溢れる体験を行いました。
「触られる感覚まで再現したのか…」
この実験では、VR内に入った状態で視覚的に男性に女性の体、女性に男性の体を体験してもらと当時に、現実での体へのタッチをVR空間での映像と同期させました。(VR内で触れられるのと同じタイミングで、現実世界でも被験者に触れる。正確には専用の道具を被験者に当てる。)
現実での体へのタッチとVR空間での映像の組み合わせは、ほとんどの被験者に強烈な錯覚をうみだしました。
実験後に心理テストを行った結果は…
男性は自己評価から男性らしさが薄れ、
女性は女性らしさが薄れていることが判明しました。
また実際の性別とは異なる性別の体を持つことは、被験者の心の性別を異性のほうにけん引する効果があることもわかりました。
この事実は、個人の認識する自分の性別が、自分の周りの環境の変化に対して非常に影響を受けやすいことを示します。
今回の研究により、性同一性の維持が外観的な要因に大きく依存していることが明らかになりました。
人間は性同一性を維持するためには、自分の体の性を持続的に確認する必要があったのです。
この事実は性同一性に障害を持つ人々が鏡を見るのを避けたり、体の性別を隠すような服を着るというデータの裏付けになります。自分の性別に違和感があると、そこから目を背けるように自分の姿を自分の目から遠ざけてしまうのです。
そのためVRを通して異性の体を所有することは、これら性別に違和感のある人たちにとっては心の安らぎになると考えられました。
VRはこれからももっと多くの側面で私たちの生活に大きく関わっていくでしょう。様々な問題に新しい角度から解決策を見出せるのも、VRの大きな可能性の一つと言えます。
余談になりますが、
服部まゆみさん角川文庫より出版している「この闇と光」という小説には、この実験に似た大変面白く興味深い物語が展開されていました。
ジャンルはミステリーですが、今回の実験に似た部分があり、内容も面白いので機会があればぜひ一読してみてください。
この小説の物語はフィクションですが、一個人の性別を形成していく上で、外観的な要因だけでなく、周りの環境は大きな役割を担うことは間違い無いでしょう。
小さい頃から、男の子なんだから〇〇〜や女の子なんだから××〜といった風な言葉を周りからかけられたり、自分は男の子/女の子なんだからこうしなきゃ。というような暗示が、性別を形成する上では重要な役割を担っています。
私も機会があれば性転換VRを体験してみようと思います。
新しい自分に出会える…かも…?
それではまた。
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