こんにちは、エフイーです。
2021年からIT業界のバズワードとなった「メタバース」とは何なのか、調べたけどよくわからない…という人は多いと思います。
私も「メタバース」を理解するためにこれまでたくさんの書籍を読んできました。
しかし、メタバースとはこういうものである。という主張にはばらつきがあり、抽象的な表現が多かったです。
ウェブ上の記事などでは、メタバースは メタ(meta:高次元の)+ユニバース(universe:宇宙) の造語であり、スノウクラッシュというSF小説で登場した仮想世界のこと、くらいにしか解説されていません。
実はメタバースが何かよくわからないのは、単純に「メタバース」という言葉が指す技術、分野が多すぎるからなんです。
メタバースは三種類の分類に分けられ、それぞれで扱う技術も、目指すものも、体験も全然違ってきます。それらが一つのものとして語られるがゆえに、現在のややこしい「メタバース」という概念が誕生していまいました。
今回紹介するメタバースの三分類を理解することで、ややこしくてよくわからないと言われるメタバースの概念を理解することができます。
わかりやすくサービス事例も紹介していきますので、ぜひメタバースについての理解を深めてください。
メタバースの曖昧な定義
ややこしい「メタバース」には現在、はっきりとした定義はありません。
メタバースは、広い意味で「3Dの仮想空間」という説明をされることが多いです。
しかし、これらはフワッとしていてなんだかよくわからないという方も多いと思います。
それもそのはず、三種類の分類に分けられるメタバースを一つの言葉で表そうとしているので、三種類全てに当てはまる解釈を抽出するのでかなり抽象的な表現になってしまいます。
メタバースという言葉は、各々の個人や会社が自分の体験しているサービスや提供している事業ごとに「これがメタバースだ!」というように表現しているのでより複雑で難しくなってしまっています。
定義自体が曖昧なので、これはメタバース、これはメタバースではない、と判別するのも難しくなっています。
今回は現在あるメタバースサービスを分類する三種類のメタバースの定義を事例のサービスを踏まえて紹介します。
メタバースを、一つの意味や定義で解釈するのではなく、こういう場所ではこういった定義で扱われているんだ、という客観的な視点で理解できるようになるべく細かく噛み砕いて紹介していきます。
三種類のメタバースとサービス事例
書籍「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」の著者である佐藤航陽さんは、YouTubeにて、メタバースを以下の3通りに解釈できるとして解説しています。
▼現在「メタバース」を提唱している分野・業界はざっくり分けてVRSNS(ソーシャルVR)派・NFT派・3DCG派の三種類に分けられます。
この三つの分類を理解していないと、この業界ではメタバースと言われているのにこの業界ではメタバースではないと言われている、というサービスや事例が出てきたりしてよくわからない、と混乱してしまいます。
この三つの分類を理解することで、メタバースとはこういうものである!という表現が場所によって異なっていること、メタバースのサービス事例が場所によって異なる理由も理解できるようになります。
それでは早速三分類「VRSNS(ソーシャルVR)派・NFT派・3DCG派」のメタバースを一つずつ解説していきます。
VRSNS(ソーシャルVR)派のメタバース
三種類にメタバースを分類したうちの一つは、VRSNS(ソーシャルVR)派です。
VRSNS(ソーシャルVR)派のメタバースとはVRChatをはじめとしたサービスやMeta社が目指す、VRゴーグルを用いて体験する三次元の仮想世界をメタバースと定義するものです。
初めてメタバースと言う言葉が使われた小説「スノウ・クラッシュ」ではメタバースをこのように解釈しているので、一番本来の意味に近いのはこのVRSNS派のメタバースであると言えるでしょう。
YouTubeをはじめとした複数のメディアでマルチに活躍するVTuberのバーチャル美少女ねむさんは、自身の著書「メタバース進化論」でメタバースの定義を以下に当てはまるものとしています。
メタバースの七つの要素
(1)空間性
(2)自己同一性
(3)大規模同時接続性
(4)創造性
(5)経済性
(6)アクセス性
(7)没入性ー引用元:メタバース進化論(バーチャル美少女ねむ)
現状、これらの七つの要素を最も満たしていると言えるのがVRChatなどのVRSNS(ソーシャルVR)のとりわけVRゴーグルを被って体験する世界です。
ただ、VRゴーグルの普及やVR内での経済活動のハードルはまだまだ高く、VRゴーグルを用いたメタバースの実現は、まだまだ先になりそうです。
VRSNS(ソーシャルVR)派のメタバースサービス事例
VRSNS派のメタバースの関連サービスには、VRゴーグルを用いて仮想世界を体験するサービスが挙げられます。
(以下で紹介するサービスは、PCやスマホでも体験できるものですが、VRSNS派のメタバースではその中でもVRゴーグルを用いて体験する世界に限ってメタバースと定義しています。)
VRChat
中でも最も有名なのは、全世界で人のユーザー数を誇る「VRChat」です。
VRChatはGraham GaylorとJesse Joudreyによって開発され、米国の企業であるVRChat Inc.によって運営されているソーシャルVRプラットフォームです。
現在は、SteamまたはOculus Storeにて無料でダウンロードでき、Oculus QuestやHTC Viveなどに対応したVRヘッドセットを使用してプレイすることができます。
デスクトップ版も用意されているため、Windows環境があれば誰でもプレイ可能です。
Cluster(クラスター)
clusterはソーシャルVRの一つで、VRヘッドセットや、PC、スマートフォンで気軽にアクセスできるのが特徴です。
バーチャルイベント会場として多く活用され、VRユーザーとPCユーザー、スマホユーザーが同じ会場でコミュニケーションを取り合うことができます。
様々なワールドを探索でき、自作したワールド内に入り込むこともできます。
日本初のクラスターは「引きこもりを加速する」というコンセプトを掲げ、バーチャル上に新たな文化や社会圏を生み出そうとしています。
NeosVR
NeosVRは、チェコのSolirax社が開発したソーシャルVRプラットフォームです。
2018年5月4日にSteamにてβ版がリリースされ、現在はSteamおよび公式サイトから無料で入手できます。
NeosVRは、まさに「なんでもできる」という自由度の高さが特徴のソーシャルVRです。Neos VRという名前の通り、VRに対応していますが、デスクトップアプリケーションとしてもプレイできます。
NFT派のメタバース
三種類に分類したメタバースの二つ目はNFT派です。
NFT派のメタバースとは、ブロックチェーンや暗号資産という技術を用いてNFTを活用する3次元空間や2次元空間をメタバースと定義するものです。
VRSNS派のメタバースと、NFT派のメタバースは別物と考えていいでしょう。この二つを混同してしまうことがメタバースがよくわからないと言われやすい原因になっています。
メタバースという言葉がこれほどまでに広まったのは、NFT派のメタバースが投資の対象として話題になり広がったことも関係しています。
これらのサービスは仮想通貨を用いることもあるので、投資の対象として見られたことから、「メタバース=稼げる」という認識が広まってしまい、現在のメタバースにおける曖昧で複雑な解釈につながっていっています。
NFT派のメタバースサービス事例
NFT派のメタバースのサービス事例として以下の二つを紹介します。
THE SandBox
The Sandbox(ザ・サンドボックス)とは、ブロックチェーンゲームやNFTゲームと呼ばれています。
ユーザーは仮想空間上にLAND(土地)を購入、レンタルをすることで、オリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスを作成することができます。
さらにユーザーは所有するLANDやアイテム、キャラクターをEthereum(イーサリアム)ブロックチェーンによるNFTとして自由に売買することが可能です。
「メタバースを買う」という表現は、これらの仮想空間の土地などを購入することを指す場合が多いです。
Decentraland
Decentralandは、メタバース構想のブロックチェーンプロジェクトです。
開発元はカリフォルニアを拠点とする非営利団体「Decentraland Foundation」で世界中の投資家や企業から支援を受けて開発を進めています。
ユーザーはDecentraland内に創設されてる施設などを楽しむことができる他、仮想空間内で展開されるゲームなどをプレイすることができます。
さらに、Decentralandメタバース上の土地であるLANDを購入し、そのLAND上に自分のコンテンツを作り上げることもできます。
口座や仮想通貨を持っていなくても参加できるのも魅力の一つです。
3DCG派のメタバース
三種類に分類したメタバースの三つ目は3DCG派です。
3DCG派のメタバースとは、スマホ・PC・プレイステーションなどのゲーム機、VRゴーグルなどのマルチデバイスでアクセスできる三次元の仮想空間のことメタバースと定義するものです。
3DCG派のメタバースでは、以下の表のようなプラットフォームを使ってメタバース空間を構築します。
Blender:モデリングソフト
Maya:モデリングソフト
Unity:ゲームエンジン
Unreal Engine:ゲームエンジン
これらのモデリングソフトやゲームエンジンを用いて作る三次元の仮想空間をメタバースと捉えているので、あらゆるサービスがメタバースに含まれます。
3DCG派のメタバースサービス事例
フォートナイト
フォートナイト(Fortnite) は、Epic Gamesが販売・配信する、オンラインゲームで3億5000万以上のユーザーが参加する世界最大のオンラインゲームです。
フォートナイトはメタバースプラットフォームとしても人気が高く、企業やアーティストなどが次々とFortniteに参加しています。日本のアーティストでは米津玄師さんなどがライブを行いました。
あつ森(あつまれどうぶつの森)
任天堂から販売されている”あつもり”ことあつまれどうぶつの森も、3DCG派のメタバースに含まれます。
VRSNS派のメタバースにはこれらのゲーム類は含まれないので、フォートナイトやあつもりがメタバースなのか、メタバースじゃないのか?という議論はしばしば起こります。
VRSNS派の定義するメタバースに当てはめるか、3DCG派のメタバースの定義に当てはめるかによって変わってくるので何を主軸に考えているかで分類するのがいいでしょう。
3DCGのコンテンツは将来的に大きな期待が持たれています。現実と区別できないような世界がすでに仮想世界に構築されています。
VR初のメタバースが広がっていくよりも速いスピードで、3DCG初のメタバースが世の中に広まっていくと考えられます。
まとめ:メタバースってよくわからないけど結局何なの?
メタバースがよくわからない、という方向けの本記事のまとめです。
▼メタバースは、(1)VRSNS(ソーシャルVR)派、(2)NFT派、(3)3DCG派の三種類の分類に分けられる。
✔︎各分類のメタバースの要点まとめ
▼VRSNS(ソーシャルVR)派のメタバース
・VRゴーグルを用いて体験する三次元の仮想世界をメタバースと定義する |
・VRゴーグルの普及やVR内での経済活動のハードルはまだまだ高く、VRゴーグルを用いたメタバースの実現は、まだ遠い |
・主なサービス事例は、VRChat、Cluster、NeosVRのとりわけVRゴーグルを用いて体験するもの |
▼NFT派のメタバース
・ブロックチェーンや暗号資産という技術を用いてNFTを活用する3次元空間や2次元空間をメタバースと定義する |
・投資の対象になったことから注目を浴びた |
・主なサービス事例はThe SandBox、Decentralandなど |
▼3DCG派のメタバース
・スマホ・PC・プレイステーションなどのゲーム機、VRゴーグルなどのマルチデバイスでアクセスできる三次元の仮想空間のことメタバースと定義する |
・Blender、MayaなどのモデリングソフトやUnity、Unreal Engineなどのゲームエンジンを用いてメタバースを構築 |
・主なサービス事例はフォートナイト、あつまれどうぶつの森、などの3次元空間を舞台としたゲームなど |
メタバースが流行るか、流行らないか、市場を拡大するか、しないか、ユーザーが増えるか、増えないか、
これらを議論する前に、どのようなサービスを指すか、どの種類のメタバースと捉えるかを決めなければ、話し合いにすらなりません。
それぞれに課題はありますし、それぞれに優れている部分もあります。
ひとくくりに「メタバース」とまとめてしまうにはあまりに広く複雑な世界であると言えます。
バズワードになったがゆえにあちらこちらでメタバースという言葉が使われ、結局よくわからないという方は多いですし、よくわからなくなってもおかしくありません。
メタバースという言葉が出てきたり、メタバースというものに対して議論されているときは、どの技術を使ったどの分類のメタバースなのか、をしっかりと理解する必要があります。
メタバースについてより本質的な理解をしたい方は以下で紹介する本を読んだり、ゲームをプレイしたりなどの実体験を行うことが近道です。
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